第14章 高専
「…なまえ、何考えてるのか大体予想つくけど、五条は完全に分かってやってるから」
「硝子はホントなまえのことになるとうるさいよね。僕もなまえも納得してるんだから口出すなよ」
「ちょっ、悟さんっ言い方!」
「納得?言いくるめたの間違いだろ」
「はは、想像力豊かじゃん。妄想でモノ言うのも大概にしろって」
「見なくても分かるね。お前の自己満足になまえを巻き込むな」
「巻き込むに決まってるでしょ。僕はなまえの保護者も同じなんだから」
「待ってってば二人とも!これ以上続けるなら、私言っちゃうよ!?『私のために争うのはヤメテ!』ってヒロインのセリフ言っちゃうよ!?」
二人を止めたくて叫んだのに、そんな二人から何とも言えないような視線を向けられて、大火傷をした気持ちになる。これは恥ずかしいと頬が赤くなるのが分かって、それを見た悟が何を思ったのかこちらを見ていた顔を反対側に逸らした。
え…失礼では…?と悲壮感を漂わせるなまえの正面で、そんな五条に視線を向けた家入が、「マジか」と小さく呟く。
そもそも、他人からのヘイトを集めることに長けている五条はともかく、反転術式以外にはあまり熱量を感じさせない家入は、基本的に誰かと言い争うことをしない。少なくとも、なまえは見たことがなかった。
相手が同級生である五条だとはいえ、あまりにも見慣れないその姿に、驚いたのは事実で。
それほどに自分のことを考えてくれたのかと思うと、嬉しいやら申し訳ない気持ちが湧き上がる。
一方、家入はといえば、つい先程までなまえを自分勝手に振り回す五条に対し、確かな苛立ちを覚えていた。家族でも恋人でもない男女2人が同じ場所に住むことは外聞よろしくないし、それはこれから一個人として人生を歩むことになるなまえにとってどう考えてもプラスになり得ないと思ったからだ。
だが、自らの発言で自爆し、恥ずかしそうに頬を染めるなまえに対し、五条が思わず、表情を隠すため顔を背けた様子を見て、苛立ちは驚愕へと変わった。