第3章 一週間後
「そろそろ飯行こうぜー!」
「2人とも、今日は弁当だったっけ?」
頷く硝子の隣で、なまえが神妙な顔つきで口を開く。
「今日は…プリン、作ってきました」
突然のプリン作りました宣言に、一瞬、場が止まる。
すると、どこか焦ったように照れたように、なまえは両手を振る。
「あ、その、みんなの分作ったから、昼食後のおやつにでもと思って」
慌てる雰囲気を出して言葉を紡ぐなまえは、いくら男子達から揶揄われようと、こういったことを素直にしてしまう。だから奴等は調子に乗って、遠慮なくなまえを揶揄うのだろうが、こればかりはどうしようもないだろう。
なまえすごいね、ありがとーと言葉を返す近くで、甘党な五条が、マジで!やったと小学生男子のように喜んでいる。夏油もへーいいね、と満更でもなさそうで。
食堂へと向かいながら、でもどうして急に?と聞けば、なまえは口の端を上げて、そっと硝子に顔を寄せた。
「あの2人のプリンには、タバスコ仕込んでやった」
前言撤回、こりゃ根に持ってるわ。
しかも確実に、あの2人に毒されている。
実行すれば、恐らく現行犯で、なまえはあの2人に100倍返しされるだろうが、あの2人がタバスコ入りプリンで苦しむ様を眺めるのを諦めるのは捨てがたい。
「(あの2人から逃げるの、少しは手伝ってあげよう)」
これから起こる3人の悲劇。それを知らない(想像できない)3人と1人は、足取りも軽やかに食堂でへ向かうのだった。