第13章 再会
到着した部屋に入ろうとすれば、惚けた状態から復活したなまえが、微かな抵抗を始める。
「(あれ、これって側から見たら未成年誘拐?…ま、なまえだからいっか)」
独自の理論で納得して、部屋に入る。そこでようやく、下ろすように訴える彼女を、ソファーの上に、普段の彼を知る人ならば信じられない程丁寧にそっと下ろした。
五条のお気に入りであるソファーを、なまえも少なからず気に入ったようで。状況を忘れてその硬さを確かめている。(お馬鹿な子…)と少し心配になりながらも、なまえの好きなココアを手早く作って、彼女の前に軽い音を立てて置いた。
途端、そちらに目を奪われている彼女の頭に、無意識に手が伸びていた。
「それ飲んで、少しだけ待ってて」
残してきた教え子達を、さすがにそのままにする訳にはいかない。なけなしの聖職者としての責務を忘れてはいなかった五条。
自分の自宅であるこの部屋には、簡易的な結界がはってあるが、それでも久しく感じていなかった不安は拭えない。
急ぎ足で部屋から出て、目を黒い布で覆うと、教え子達のもとへととんだ。
「君たち、遠慮のない食べっぷりだねー」
「あ!五条先生!」
「虎杖、口に入れたまま喋るな」
「どこ行ってたのよ。こんな可憐な生徒をほっぽって」
寿司屋のカウンター席。五条の姿を認めて、声を上げる3人の前には、ずらりと並ぶ高級ネタの数々。その潔さに口笛を吹きたくなるほどだ。
「めんごめんご!でも先生抜きで飯食った方が友情も深まったでしょ?」
「なるほど!先生そんなの考えてたんだ!」
「…虎杖って騙されて壺買っちゃうタイプ?」
「…だろうな」
「俺壺なんか買わねぇよ?」
短い間に、ずいぶん仲の良くなった3人。
この青春真っ盛りの彼等は、これから更に仲を深めていくことだろうと、黒い布越しに五条の目は優しく細められた。
「それで、残念なお知らせなんだけど、GLGな君たちの先生は、すぐにまた行かなきゃいけないんだよね」
「大丈夫っすよ。自分たちで戻れますし」
「ほんとー?ごめんね、恵。ここは僕が付けとくから好きなだけ食べてってー」
「大トロ追加してもいい!?」
「もっちろん」