第13章 再会
仲良く話しながら待っている教え子3人に、声をかけようとして。笑い合う彼等の姿が一瞬、自分の学生時代とダブって見えた。
振り払うようにして、小さく首を振る。懐かしい実地訓練なんてものをしたから、そんなものが見えたのかもしれない。自分の中にも確かに存在した、青い春。それは、あまりにも眩しい。
「子供は送り届けたよー。今度こそ飯行こうか」
「ビフテキ!」
「シースー!」
「はい、ジャンケン」
その一言で始まった、仁義なき戦いは、釘崎の勝利で締め括られた。地面に両手を付いて悔しがる虎杖だったが、復活も早い。
気持ちを切り替えて五条がおすすめする寿司屋へ歩きながら向かう。
その途中。
「間違いないわ!幽霊よ!」
声を潜めて話していた釘崎が、いつの間にか抑えることを忘れた声量で話した単語に、五条も反応して視線を向ける。
呪術師である人間が、幽霊だなんてずいぶん面白い話だ。もちろん、彼女も本気では言っていないだろうが。
楽しそうな話題に食い付くのが五条悟という人間だ。話し込む3人に覆い被さる勢いで伏黒と虎杖の肩に手を置いて覗き込んだ。
「なになに?3人して、面白い話?」
問いかけを受けて、虎杖が良い方法を思いついたと、その顔を五条へと向けた。
「先生、呪術高専の三年の先輩に、みょうじなまえって人、いる?」
悪意も含みもない、ただ疑問として出されたそれは、滅多なことでは動揺しない五条の思考を、一時的に止めることに成功した。
懐かしい名前だ。もう呼びかける人がいなくなった名前。それがなぜ、知るはずのない虎杖の口から出たのか。
うまく制御できなかった感情が漏れてしまったのか、五条の正面にいる虎杖が、ごくりと唾を飲み込んだのがわかった。
「…悠仁、その名前どこで聞いた?」
目隠しをしていて良かったと思う。こんな情けない顔は生徒に見せられない。どこか硬さを含むことを誤魔化しきれない声で問いかければ、虎杖が困惑したように頬をかいた。
「いや、聞いたっていうか…さっき、呪霊を祓った廃ビルに、高専の先輩がいて、その人が、そう名乗ってたから…」
「私も会ったわよ。黒髪の、女の先輩。任務だって言ってたけど」