第10章 変化
やられた。
申し訳なさそうな表情をする一年生2人を前に、なまえの頭にはそんな言葉が浮かんだ。
五条と夏油が任務へ向かった翌日の朝。一年生と呪術訓練をする為に、グラウンドへと向かったのだが。そこには、手荷物を持つ灰原と七海が立っていて、急な任務が入ったことを彼女に告げたのだった。
「すみません、昨夜遅くに夏油さんから連絡がきていて」
「夏油から…」
恐らく五条に頼まれたのだろう。
なまえの口端がひくりと引きつる。
「今回の任務のことで、僕等に協力してほしいと言われて」
「沖縄まで行くことになりました。飛行機の時間が迫っているので、もう出なくては」
「あ、うん、気をつけて…」
申し訳ない顔はしつつも、憧れの夏油から任務を頼まれたことで、灰原からやる気が伝わってくる。空港に行くため、車に乗り込む彼らを、手を振って見送った。
「沖縄…」
近場での任務だったはずではなかっただろうか。何がどうなって沖縄に行くことになったのかは分からないが、見事に一年生と引き離された。
最後に見せた、五条のあの含みのある視線が気になっていたのだが。
「(私が任務に行かなかったからって嫌がらせ…?)」
当たらずとも遠からずではないだろうか。
五条と夏油の任務内容については、大まかに説明を受けた。星漿体の少女を護衛する任務だと聞いている。とても重要な任務であるが、五条と夏油の実力ならばそれに選ばれたのも分かる。
だが、一年生に務まる任務かと言われれば、それは違うと思うのだ。
「(冥先輩でも歌姫先輩でもなく一年生って…ぜーーーったい悟と夏油の独断じゃん)」
一年生がいなくなってしまっては、後はもう自主訓練か硝子の反転術式訓練の隙を見て遊びに行くしかない。
どうせ明日には帰ってくるのだから、文句はその時に言ってやろうとなまえは硝子がいるだろう医務室へと向かうのだった。