第14章 貴方と共に$(煉獄裏夢)
藤の花の屋敷で炎柱が休養との知らせを受け、出向いた那岐だったが、杏寿郎は目立った外傷はなく、物思いに耽っているようだ。
「杏寿郎様、どうされましたか?」
「ああ、藤姫殿。なに、少しな」
「?」
小首を傾げる那岐の髪を煉獄が優しく撫でる。
されるがままになっていると、煉獄が口を開いた。
「やはり、那岐と呼んでも良いか?」
「構いませんが、何か心境の変化でも?」
「ああ、君を正式に家に迎えたい」
「………杏寿郎様、何か長患いにでもかかりましたか?」
「そうではない…」
「では、何故…?」
ぎゅっと抱き締められたかと思うと耳許で囁かれる。
「本当に、分からないか?」
その声音にどきりとする。