第62章 呼吸についての記録帳 (拾壱)
私、七瀬が編み出した独自の型で雷の呼吸との合わせ技。
炎の呼吸の壱ノ型から奥義 玖ノ型のまでの構えを1つずつ舞を舞うように放っていく。
そうすると1つずつ、日輪刀に炎が鍔から剣先に向かって灯って行き、全部で12個の炎が灯る。
炎が全部灯ったのを確認した後は、炎の呼吸の壱ノ型、不知火と同じように離れた相手の間合いから力強い踏み込みで一気に素早く横に切り込む。
この型を出すには相応の精神力の強さが必要かつ、緋色の稲妻を身の周りに背負ったりと身体への負担が大きく、呼吸が今後使えなくなる覚悟を持つ事も必要。
——— 使用する際に必要な心構え ———
その1.相手に怯まず、自分を信じる事。
その2.自分に負けない事。
その3を書き記そうとした正にその時………
「どうした!もう終いか!!」
煉獄邸の庭から杏寿郎さんの大きな声が響き渡る。
「あーあ、まただ……本当に加減を知らないんだから」
私はその3を素早く書き込んで筆を傍に置き、立ち上がった。
あの戦いの後、杏寿郎さんの継子になりたいと言う隊士が急増した。
急増したけど、とにかく稽古が厳しいので私が継子になる前と同じで既に何人かが来なくなっている。
だから継子希望の隊士のやる気を削がないよう士気を高めて継続してもらう。それを上手く調整するのが元継子であり……
そして、彼の婚約者としての私の役目なのだ。
「みんな大丈夫かな……」
稽古を受けている隊士達を案じながら、庭に行く足を速めた。
炎雷を出す際に必要な心構え。
その3. 心の炎を絶やさず、灯し続ける事。
私は最後に、そう記しておいた。