第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
「すまんな、また呼んでしまって」
カナヲとの任務を終えた次の日の昼食後。私は再び槇寿郎さんに居間に呼ばれていた。
「いえ、大丈夫ですよ。それから今朝千寿郎くんが以心伝心で塩大福を買って来てくれたので、宜しければ食後の甘味にどうぞ」
持っていたおぼんから大福が乗った小皿と麦茶が入った湯呑みを槇寿郎さんの前に置いた後、自分も座布団に腰掛ける。
「ありがとう。これは人気でなかなか買えないそうだな」
「そうなんです、今日は運が良かったと凄く喜んでいました」
いただきます…とお互いに手を合わせて、それから大福を食べ始めた。
今日も絶妙の塩加減で、槇寿郎さんの頬も私の頬もほころぶ。
半分程食べ終わった所で、名前を呼ばれた私は麦茶をゴクっと一口飲み、口腔内にあった残りの大福を喉の奥に流し込んだ。
「あまり君に重圧を背負わせすぎないでほしい。千寿郎にそう言われた。確かに自分の日輪刀の色が変わらない—それは継子の七瀬さんが炎柱である杏寿郎の後継になると言う事だが……」
「えっ……そんな事を千寿郎くんが?」
「ああ」
本当に驚いてしまった。
「継子の前に杏寿郎の恋人である、七瀬さんの気持ちも大事にしてあげたい……そう言っていたぞ」
「そうですか…。それは私が弱音を吐いてしまったからかもしれませんね」
そうして昨日千寿郎くんに言った言葉と全く同じ事を槇寿郎さんにも伝えていく。
「七瀬さん、そう感じてしまうのは当然だ。他に手立てがないのだからな。俺も恐らく君と同じように考えてしまうと思う」
「えっ……槇寿郎さんがですか?」
「ああ。俺は杏寿郎や千寿郎のように、心が強いとはあまり言えない。だから瑠火が亡くなり、日の呼吸の事を知った時に堕落してしまった」
「………」