第51章 甘えさせ上手と言われたい ✳︎✳︎ ＋

さて何と答えようか。

ここは素直に伝えるべきだろうな。先程俺に言ってくれた【愛おしい、あたたかい、気持ちいい】故におかしいわけではなく、安心すると思った。

そんな事を七瀬に言ってみると、今度は彼女が小さく笑う。

「安心して貰えてるんですね。凄く嬉しいです」

また一つ頭頂部に彼女の口付けが落ちた。
一瞬だけ髪にあたるこの感触も実に心地が良い。結局七瀬が自分にしてくれる事はどんな行為であろうと気持ちが良いのだ。

こうして抱きしめてくれる事、口付けをしてくれる事。それから話をしてくれる事。

「そうだな。しかし、もっと安心する事と言えば…」

「？ 何でしょう」

一瞬虚を突かれたであろう雰囲気を出す七瀬。

顔を彼女の方に向け、下からふっくらとした唇に口付ける。二度程小さな音を出しながら、七瀬の唇を吸った。それからゆっくりと顔を離すと、瞬きを繰り返す君。


「やはりこれだろうか。七瀬との口付けはもちろん、その顔を見るとより安心する」

「もう…またそんな事言って」

「次は何をしてくれるんだ？」

「えっ？ うーん……」

両目を閉じると眉間に皺を寄せて思案を始める七瀬が、愛おしくてたまらない。再び彼女の唇を二度吸ってやると「邪魔をしないで欲しい」と言われてしまった。

むう、早く君にやって欲しいが為に待ちきれなかった。

ここはグッと我慢をせねば。鬼殺の為ならば耐え忍ぶ事など造作もないと言うのに、こと七瀬に関する事だけはどうにも耐えるのが難しい。

「思いつきました。じゃあ…私を後ろからぎゅっと……して下さい」

「承知した」

了承のしるしにまた彼女に口付けると、今度は笑顔を見せてくれた。頃合いが大切。頭では理解しているのだが、やはり恋愛と言う物は理屈だけでは上手くいかないな。