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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第50章 父と息子の初炎武(えんぶ) 〜二人の炎柱〜 +



「凄くかっこよかったです」

「七瀬、それは俺を労ってくれているのか?」

「……そうですよ」

重なった二人の手が一旦離れ、また絡み合う。

「では言葉だけではなく、行動でも労って欲しい」

「え……」

杏寿郎の右手が七瀬の左頬をそっと包んで、一度撫でる。
とくんと心地よく高鳴るのは彼女の心臓だ。

「あの、確認なんですが。それって…先日杏寿郎さんと手合わせした後、私に労ってくれた……あれ、ですか?」

「そうだな!」

それは恋人同士の関係の二人なら、決して特別な事ではない。
いつもと同じじゃないかと七瀬が問いかければ、いつもと同じが良いのだと笑う杏寿郎だ。


「俺と君は共に鬼殺隊で、明日生きているかどうかもわからないだろう? 故にいつもと同じ —— これはとても大切な事だ」

「……そうですね。あ、杏寿郎さん」

「どうした?」

任務前だが、一分だけ抱きしめても良いか。そんな問いかけを七瀬がすると ——

「一分は少なすぎだな! せめて五分だ」

「四分延長ですね。嬉しいです」

ふふっと口元に狐を描く七瀬のそこへ一粒の口付けが落ちる。

互いの唇が離れると、そのまま彼女は杏寿郎に抱き寄せられた。広く大きな背中に華奢な腕がまわると、杏寿郎の口元にも笑顔が宿る。

「このあたたかさに私は何度も助けられています。杏寿郎さんにこうしてもらうと、何でも出来そうになるし」

「そうか」

「はい、そうです……って私達今日こう言うやりとり多くないですか?」

そうだな、とまた杏寿郎の口から飛び出した。二人は五分後、しっかりと気持ちを切り替えて街の見回りへと共に出かけた。







見回りの任務が無事に終了し、帰宅した七瀬と杏寿郎は湯浴みも共に済ませて寝巻き姿で向き合っている。

「今日の杏寿郎さんは、本当にかっこよかったです」

「ありがとう」

両手を広げた彼にゆっくりと寄り添った七瀬は小さな口付けを杏寿郎に贈ると、昼間と同じように華奢な腕を彼の背中へ回した。


「どう労えば……良いです?」

「うむ……こう言った物はどうだ?」

今夜もまた二人の大切な一夜が始まった ———


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