第47章 心炎八雲、甘い色香に混ざり合う ✳︎✳︎ ＋

「大丈夫ですか？」
「大事ない」

……抜けてしまった。

よもやの出来事であった。一瞬何が起きたのかよくわからなかった。
七瀬の蜜がたっぷりと付着した男根に、ひんやりとした空気が触れて、ようやく事態が理解出来たのだ。

「あの……私は」
「ああ、それ以上は口にしなくていい」

「ごめんなさい」
「何故君が謝るのだ？ 俺側の問題だぞ」

「違うんです、嬉しくて……」
「うれ、しい……？」

はいと申し訳なさそうに頷いた七瀬は、背中を壁から離し、ぴたりと俺に密着して来た。あたたかな体温が胸元にじわっと広がると、両腕を回し、彼女をゆっくりと抱きしめた。

「杏寿郎さんは、剣術も教養もほぼ完璧でしょう？ だから隙もちゃんとあるんだなあって安心しちゃいました」

「隙……？」

そうです、と笑った七瀬が顔を上げ、ちうと触れるだけの口付けをくれる。

「それにさっきの、その……体位？も私を気持ち良くさせようって思いからやってくれた行動だから、嬉しいなあって思っています」

「………」

自分の恋人が俺でやはり良かった。
それはいつも思っているが、今夜は特にそう感じた。ますます好きになったと、言葉に出してくれたのだ。

「普段の杏寿郎さんからは絶対想像出来ない姿だから、それを見れたのも嬉しかったですよ。心許してもらえる存在に少しはなれてるのかなって……」

「そうだな」

男として見せたくはない、出来れば避けたい事例なのは間違いない。しかしだ。

「次回はきっと上手く行きます！ 私も、協力……しますね」
「そうか、君も興味が湧いて来たか！」

目を閉じ、はい……と小さめの声で頷く七瀬を見れば、先ほど感じた事は大した事ではないのだと、心の底から感じられる。

「次回とは言わず、すぐにでも協力してくれ」
「えっ、あの。それは……流石に早すぎかと」

「むう」
「……杏寿郎さんは本当にせっかちですよね」