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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第47章 心炎八雲、甘い色香に混ざり合う ✳︎✳︎ +



「杏寿郎さん……」
「どうした?」

彼の名前を呼ぶと、右頬に杏寿郎さんの左頬がぴたりと密着してしまう。触り心地が良い恋人の肌が自分の頬にじわっと染み込んだ。
ぎゅうっと胸が鷲掴みされた私は ——

「もっと……気持ちよく、なり……たい、から……」
「うむ」
「……」

ダメだ、この先が……口に出せない。

「………」
「七瀬」

鼓膜を心地よく震わす、低くて艶っぽい彼の声。
杏寿郎さんに名前を呼ばれる度に、いつも胸が高鳴るけど安心もする。

右耳にちうと一つ柔らかな雨が落ちた。ふるっと体が揺れるのは心地いいから。言わなきゃ……

「たくさん…触れて…下さい……」
「やはり素直な君は、たまらなく可愛いな」

再び彼の両手が動き始めると、自然とこぼれるのは吐息と声だ。

私はその後、杏寿郎さんの手の愛撫だけで一度気をやった。
触れられるだけではなく、彼の思いがこもった動きに自分の体が反応してしまったのだ。

今は布団に隣り合って寄り添っていて、私の髪に触れているあたたかな感触は恋人の大きな手なのだけど。


「杏寿郎さんの意地悪……」

いつもこう。
彼は普段とても優しい人だけど、情事の時は奥底に秘めている加虐心を露わにする。

「俺は七瀬にそう言って貰うのが好みのようだ」

はあ、これだもの。杏寿郎さんにとって【意地悪】と言う形容は褒め言葉になっているみたい。
顎が柔らかく掴まれると同時に、また彼の思いがこもった口付けが届く。

自分の唇があたたかな唇で挟まれると、ちうちうとかわいい音が響いていく。口付けだけで胸いっぱいになった私は、一体どんな顔を彼に見せているのだろう。

「すまんな」
「…いえ」

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