第40章 彼を褒めれば笑顔に当たる ✳︎✳︎ +
「はあっ…んっ……ふぅ」
「七瀬…もっと、動いて…良いぞ」
いつの間にか、彼女は自ら腰を動かしていた。自分の両手は乳房をやわやわと揉み込んでいるだけだ。
「あっ、ちょっ…きょうじゅ、さ」
「すまん、ここがやはり…好みだ」
唇を恋人の膨らみへと移動させた。
丸く熟している先端は俺の口内でされるがままになる。
引っ張るように吸い付いてやれば、七瀬の悲鳴とも取れる啼き声が耳に届いた。
「あっ、やっ……!?」
ジュ、ジュ、と蜜を吸うような動きをしつつ、片方の乳房への愛撫もおざなりにはしない。
掌でしっかりと揉み込み、先端をかわいがってやる。二つの指で触れると、瞬時に固くなる乳輪が愛おしい。
段々と彼女の腰を打ちつける速さが増していく。
絶頂が近いのだろう、俺の首へ回した腕にやや力が入って来た。
「七瀬…好きだ」
「んっ、はあ…私も好き……で、あっ……」
「そんなに…締め、るな」
繋がりを保ったまま、畳に押し付けた彼女の上から包むように覆い被さる。
位置が変わり、今度は自分が動いて七瀬を揺さぶっていく。
律動を繰り返し、恋人の下腹部から己の肉棒をするりと抜いた。
滑るように出て来たそれはピンと固く、ある一点を狙いながら競り上がった強い欲を、彼女の腹部へ解き放った。
一回だけでは済まず、二回、三回と複数に分けて白濁をかけた後は、ふうと一つ深い息継ぎだ。
真下で息を切らしている七瀬の唇と両頬に口付けをすると、嬉しそうに口角を上げる彼女にこちらも口元が綻んだ。
「では共に、湯浴みに行くとしよう」
「……はい」
七瀬の腹部を懐紙で拭き取り、橙に彩られた両の指先にも口付けを落とす。
「また見せてくれ」
「ふふ、わかりました、あっ杏寿郎さん…待って」
「どうした?」
部屋を出る前、彼女から左胸に赤い花を三つ程咲かせて貰った。
七瀬の左胸にも同じ物が同じ数だけ咲いている。
しばらく枯れない恋慕の花びらの大きさは、金柑一つ分。三つ咲いたので、三つ分だ。
これは俺と彼女。二人しか知らない秘密のやりとりだ。
✳︎杏寿郎目線✳︎
終わり