第36章 3日分の炎 ✳︎✳︎ +
〜杏寿郎から見た景色〜
再び七瀬が俺に顔を向けたので、顎をくいっと掴む。自分の目の奥が先程から熱い。
その熱はきっとこれから上昇するだろう。
「七瀬……」
恋人の名前を呼んだ後、三日分の愛情の始まりとして口付けを彼女の唇に届ける。
「ん、杏寿郎さ……苦し……もっと、優しく……」
「すまん…もう今日は……余裕が」
先程のような優しく啄む口付けは出来ず、荒く激しく吸いつく。彼女の細い肩を両手でがっしりと掴んだ。
「はあ……んっ……」
七瀬の歯列をいつもの倍の速さでなぞっていく。
止められない。苦しそうにしている彼女が自分の肩を平手で叩くが、構う余裕が全くない。
その時—— 俺の頬がグイッと一度つねられた。
「んっ……!」
これには驚いた。
その弾みで、唇同士の距離が一瞬だけ出来る。その隙に七瀬は俺から体を離し「落ち着いて下さい」と声をかけて来た。