第36章 3日分の炎 ✳︎✳︎ ＋

「こうさせたのは私にも責任がありますけど…」

私は彼の大きな体をそっと抱きしめる。そして背中をゆっくり撫でた。


「でもやっぱり杏寿郎さんと触れあう時間はいつだって大事にしたいです。だから………いつものあなたが良いです」

そのまま私は彼の背中を撫で続けた。


「………」
「ごめんなさい。痛かったですよね」

私は背中に回していた手を杏寿郎さんの両頬にそっとあてた。
そしてつねってしまった頬をゆっくりと撫でる。

「いや、大事ない……」
彼の瞳に落ち着きが戻っていた。


「すまんな」
「いえ……」
「七瀬」

杏寿郎さんが私の両手を自分の頬からゆっくり外すと、トン……と近くの壁に優しく押し付けた。


「改めて、3日分を受け取ってもらえるか？」

私を見つめる２つの日輪がまた燃え始める。けれど、さっきより随分と穏やかな炎になった。


「はい」

返事をすると、彼が自分の両手を私の両手に絡めて来る。そっと握り返せば、ゆっくりと優しく唇を当てられた。