第20章 ほどけない夜が明けた後は ✳︎✳︎
まだ薄暗い早朝だけど、昨夜ぼんやりとしか見えなかった彼の体の部分がはっきり見えた。
体に刻まれたたくさんの傷はそれだけ命を懸けて戦った証拠。
先程「ダメ」と言ったものの、愛おしい気持ちが急に駆け上がって来てしまい、吸い寄せられる様に杏寿郎さんに抱きついてしまった。
「どうした?ダメではなかったのか?」
頭の上からフッと笑う声がすると、私の髪がゆっくりと彼の指で梳かされる。
「ダメだったんですけど……まだ朝も早いですし……その……」
『もう一回』 そう、思い切って言おうとしたら。
くるりと私の視界が反転した。先程と同じように杏寿郎さんが私の上に跨る。
「………俺は本当にやめようと思ったんだが君がそのつもりなら」
「遠慮なくもらうぞ」
三度(みたび)彼の唇が、上から降って来た。
啄むような口付けがひと段落すると、舌をスルッと差し込まれる。
歯列も丁寧になぞられ、心地よくなった私は自分の舌を彼の舌に絡ませていき、腕を先程と同じように首に回す。
「七瀬………」
甘くて低い彼の声。囁くように名前を呼ばれると、体の芯がドクン!……と跳ね上がる。