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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第22章 消失



月奈は広間で一人、ある人物の入室を待っていた。
広大な敷地を持ち、財力もおよそ想像もつかない程持っていると噂されるこの屋敷の主。

そして夜に巣食う鬼から人間を守る為に組織された〔鬼殺隊〕を纏めあげる統率者。

「「お館様の御成です」」

双生児と思う程に顔立ちが似ている二人の少女が襖を開けば、言葉通りお館様が入室される。すかさず月奈は頭を垂れて衣擦れの音だけを聞く。

館「よく来たね月奈、迷わなかったかい?」

そよ風のように穏やかな声が耳を撫でていく、何時までも聞いていたい様な透き通る声音だ。

「お館様の鎹鴉のおかげで問題無く到着出来ました。私の無理を聞き入れて頂き感謝致します」

顔を上げて、と言われ従った月奈は普段の隠の隊服ではなく、着物を身に付けている。この場に合った落ち着いた色合いの反物で仕立てたもの、杏寿郎としのぶと三人で街に行った時に買ってもらった物。

館「月奈が鬼殺隊に入って、柱の皆とも随分と仲良くなっていたね。本当にこれでいいのかい?」

何度も何度も悩んで出した答えに悔いはない、否、悔いを残したくはない。月奈は静かに頷き「はい」と答える。

「鬼殺隊に仲間として迎え入れて頂けたこと、本当に幸せでした。辛い事や悲しい事もありましたが、その全てを思い出として持って行きます」

館「そうか、煉獄家に挨拶は?」

その問いにはゆっくりと首を横に振る。失礼に他ならないことは承知の上、誰かに挨拶をすれば今日の事を知られてしまう可能性があった。それではきっとここに辿り着くことも出来ないだろうことは容易に想像が付く。

「どこからこの事が漏れるか分かりませんので、他の隊士達にも何も...」

館「その代わりに文を書いたんだね。責任をもって皆に渡そう」

そう言うとあまねが月奈から沢山の文を預かり頷いた。お館様にお願いをするのは厚顔無恥ともいえるが、自分から渡すことは出来ない以上恥を忍んで頼むしかない。

「大変失礼なお願いですが、よろしくお願いいたします」

館「その代わりに二点、私からのお願いがあるんだ、聞いてくれるかい?」

お館様から二つの願いを聞いた月奈は驚きに目を丸くしたが、二つ返事で頷いた。

この日を最後に、月奈は忽然と姿を消した。
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