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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第19章 前進と後退



(あぁぁぁ!!もう!もう少しで触れたのに)

自室に戻った月奈は羞恥と後悔に苛まれ悶えていた。
別に杏寿郎を避けるつもりはなかった、寧ろ久しく触れていなかった杏寿郎に触れたかった。けれど…

「駄目駄目!今日はこれから釣書の返事を書かなきゃ」

触れてしまえばもう少しもう少しと欲張りになってしまうことは予想できた。

(そんなことになったら明日しのぶさんに返事を届けられなくなる!それはこの先また釣書が届くようになる…それは駄目駄目駄目駄目!)

釣書が届けば余計な心配をかけることになる。清花のおかげで杏寿郎の立場に立って考えることを覚えた月奈は考える。もし、杏寿郎に釣書が届き続けていたならば、と。

(…この件が落ち着いたらもう少しゆっくり時間を過ごしたい。その為には早く片付けないと!)

夜も深まる時刻、月奈は筆を取り黙々と返事を書き始めたのだった。


一方、あともう少しで唇に触れることが出来そうなところであっさりと逃げられた杏寿郎は放心状態だった。

煉「先を求めたことが見透かされたのか?…うむ、気取られるとは不甲斐なし!」

考えても仕方のないことだ。月奈が少しずつ年頃の少女のように恋や愛を知って大人へと変化している今、無理に迫ることで過去の出来事に引っ張られる可能性もある。

ー蒼樹という男は本当に…

煉「死してなお月奈に残り続ける忌々しい男め。いやあの男のせいではないのか…月奈を傷付けない為じゃなく、俺が傷付くのが恐いだけかもしれんな」

自身の強欲さで月奈に嫌われてはしまわないかと怯えるが故、理由付けをして逃げているだけかもしれない。まだ幼いから、過去を思い出させたくないから…それは己の欲を抑えるための詭弁に過ぎない。

ー月奈が全てを受け入れる覚悟が出来るまでは、やはり俺から事を進める訳にはいかん。

月奈の女としての成長を傍で見守る、それはつまり己の理性を保つ強さが必要となる。全てを受け入れる覚悟が出来る時期がいつなのかも分からない、ということは無期限の我慢を強いられること。杏寿郎は溜息を吐いて布団へと潜り込んだ。

煉「所謂、生殺し…だな」

ポツリと呟いた言葉は、暗闇に吸い込まれ杏寿郎は目を閉じて眠りへと落ちて行った。
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