第18章 任務
血鬼術。それは鬼の中でも力が強い鬼が持つ能力。
鬼によって様々な効果の血鬼術があると報告されている。
「禰豆子ちゃんも血鬼術を使えるってしのぶさんから聞いたけれど、どんな血鬼術なのかしら」
樹の上から隊士達の動きを観察しながら、月奈は周囲を見回す。その顔には少し疲れが見えている。
(さすがに連日の任務で疲れてきたなぁ。中々鬼を見つけられない)
雅「月奈、お疲れ様。大丈夫ですか?」
下から響いた声は雅雄の声だ。下を覗き込むとひらひらと手を振る姿が見えた月奈は雅雄の隣に降り立つ。
今回の任務は普段と変わり無いもの、鬼を滅殺した後の処理をすること。しかし、肝心の鬼が見つからないのだ。
「雅雄様、剣士の方たちに比べたら疲れたなんて言えませんよ。今回の鬼は何かの血鬼術を利用していると先程伝令が走りましたが、目くらまし等の類でしょうか?」
雅「その可能性が濃厚だけれど、中々に厄介ですね。もう二日も経ってしまいました」
この様子では三日目に突入だろう。
空に浮かぶ月が大分西に傾いていることから、夜明けが近いことを察する。
「稀血でおびき出すことができれば…あぁ、そんな顔しないでください。簡単にそんなことしないように皆に言い含められていますから、やりませんよ」
ポツリと呟いた言葉に、雅雄がチラリと呆れたような視線を向けて来ることに気付いた月奈は苦笑する。
雅「最終選別の頃ならば、簡単にやっていたのでしょうね。随分と言い含められたようですね」
いい事です、と頷く雅雄に何か面白くない月奈は、むぅと不満気な表情をしたが、否定はできない。杏寿郎は勿論、しのぶや長谷師範にまで心配をさせた上に、体の傷について悲しい表情をさせてしまっている現状を考えれば当然だ。
後「水橋ー、今日も成果無し。今日の夜に出直しだとよ」
「承知しました!では、雅雄様また夜に。失礼します!」
離れた所から撤退命令を飛ばされ、月奈は慌てて先輩隠である後藤の元へと走って行った。藤の花の家は主に剣士達の回復場所として存在しており、隠は野宿が基本となっている。
「あと何日で野宿は終わるんでしょうか…」
後「さぁなー。そういや今日の夜からは風柱様が合流するとかって鴉が伝令して回ってたぞ」