第16章 回復
もしも~し、としのぶが二人の頭をつつくと、身じろぎをしたのでどうやら気絶はしていないようだ。杏寿郎にとっての軽度の鍛錬とは一体…としのぶは思いながらも、全員にそろそろ部屋に戻るよう促す。
炭治郎と伊之助が善逸を抱え、杏寿郎が月奈を抱えて鍛錬場を出たところで、炭治郎達三人は庭の井戸で顔を洗うといって庭に歩いて行った。月奈はそんな気力もないので、現役の剣士の体力は化け物並と改めて思う。
し「月奈は湯浴みする前に傷口を見せて貰いますね。傷が開くような鍛錬はしていないと思いますが…ねぇ煉獄さん?」
煉「う…むぅ!おそらく問題無いはずだ!」
(鍛錬が始まってからは多分そんなこと頭に無かっただろうな…)
言葉を投げかけたしのぶの表情は笑っている。が、目は笑っていない。杏寿郎はソッと目を逸らしながらも首筋にヒヤリとした汗が伝った。
病室に戻り、月奈をベッドに下ろすと杏寿郎は部屋を出て行った。しのぶに包帯を解いて貰いながら、先ほど耳を塞がれていた時の会話について聞き出そうと再度試みた月奈だったが、これもまた笑顔で躱されてしまう。
し「それはお教え出来ませんね。きっと煉獄さんも聞いてほしくないと思いますよ。こればかりは秘密です」
傷を確認したしのぶは頷くと、ガーゼを当ててテープで留めていく。今後はこの保護のみで問題無いと言われ月奈はホッとした。
「自分で包帯を巻くことが難しくて難しくて、このままじゃ退院できないなぁって思っていたので嬉しいです」
し「ですが、鍛錬する時は固定を忘れずに行ってくださいね。あとは、忘れず定期的に検診に来てください」
はい!と返事した月奈が入院着を着直すと、しのぶは廊下で待っていた杏寿郎に声を掛ける。
し「傷は塞がりましたし、出血もありませんので退院は可能ですが、本日退院されますか?それとも別の日に?」
煉「今日ならば俺と共に帰ろう。身支度があるならば明日でも構わんぞ、また明日迎えに来るだけだからな!」
し「月奈、どうしますか?」
「今日でも良いのなら今日退院がいいです!」
即答で月奈が答えると、杏寿郎が嬉しそうに微笑んだ。退院の手続きをする間に清拭をして着替えるようにと、しのぶは月奈を湯殿に連れて行った。