第13章 気付き
お互いに想い合っているのだろうと思わせる二人の距離、しかしどちらともなく距離を取っているようにも感じる。天元の言葉にしのぶはしばし考え込んでから月奈に一つ疑問を投げかけた。
し「月奈はお慕いする方はいないのですか?」
突然の質問に月奈は目を瞬かせ、んーと声を出して天井を見つめる。
「杏寿郎様…実弥様、天元様、しのぶ様、雅雄様、後藤さん…」
最初に杏寿郎の名前が聞こえた瞬間、天元としのぶは「おぉ!」と歓声を上げかけたが、次々と飛び出してくる名前に「えぇ…」と微妙な顔になってしまった。
し「そ、そういう慕うではなくてですね…でも私のことも慕ってくれて嬉しいですよ月奈」
まだ名前を上げている月奈を、しのぶは頭を抱えながら止めに入る。
宇「おいおい、まさか…地味に意味を知らねぇのか?」
はい?とキョトンとした顔をした月奈に、傍らに立っていた天元の嫁達もつい珍獣を見るような目で月奈を見つめてしまっていた。
宇「つまりだな…何て教えりゃいいんだ?」
し「月奈はまだ十五ですから、疎いのは仕方ないのかもしれませんよ宇髄さん」
遂には天元も頭を抱えてしまい、月奈の頭には「???」が飛び交ってしまうこととなった。
煉「賑やかだな、宇髄!胡蝶!宇髄の奥方達も久方ぶり…」
宇「あぁぁ!つまりだ!接吻したいとかまぐわいたいとか、そういう欲を派手に感じちまう相手だ!!!」
煉「よもや!なんの話をしているんだ宇髄!?」
考えても思いつく言葉がそれしかなかった天元の叫びは、たまたま入室してきた杏寿郎を驚愕させた。入口に立ち尽くした杏寿郎に月奈以外の視線が向くと、異様な雰囲気に杏寿郎は一歩下がってしまった。
「接吻…まぐ…わい…」
考えるように呟いてから、何かを思い出したように一瞬で赤面した月奈は全員の視線が自分ではない別の方向に向いていることに気付いた。つられて視線を向けた瞬間、月奈は叫び声をあげてしまった。
「わぁぁぁああ!!きょ、杏寿郎様!!!?…んぎゃっ!」
体を引いた月奈は手を着き損ねてそのままベッドから落ちていった。
し「月奈!宇髄さん、何という事を言うのですか!」