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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第12章 失ったもの



煉「俺は柱を辞することになるかもしれん。ただ、剣士であることまで諦めるつもりはない。回復したらお館様とお会いすることになるだろう」

煉獄家は代々炎の呼吸を守ってきた家系、そして歴代の炎柱を務めてきた。しかし、杏寿郎の次に控える呼吸の継承者がいない。それはつまり、継承者が現れるまで炎柱の席が空くことになる。

一家は分かっているのだろう、それ故に弟の千寿郎の心中も複雑だろうと月奈は思う。煉獄家の男として生まれ、父と兄が炎柱として名を連ねて来たのだ。たとえ周りの人間が気にせずとも、千寿郎自身は悔しい思いをしているのではないだろうか。

「江戸の時代でも隻眼の侍が居たと何かの書物で呼んだことがあります。剣士でいることは可能かもしれませんが、お館様がどう考えられるか分かりません」

(柱が一般隊士に戻り任務につく…駄目だ、違和感しか感じない。絶対に目立つに決まっている)

「とにかく、元気にならないとお館様にお会いできません。しっかり休んでください。昏睡から目覚めたばかりで体がまだ辛いでしょう」

そうだな。と立ち上がった杏寿郎は月奈の頭を撫でて「今後のことは父上とも相談してみよう」と微笑んで扉に向かっていく後ろ姿に、月奈は違和感を感じて呼び止める。壁を伝うこともせず、歩いている杏寿郎も片目が塞がれているのだ。

煉「俺はこれからこの右目だけで物を見るしかない、今の内に慣れておかないとな。何事も鍛錬だ!」

(だからといって、そんな直ぐに慣れるはずもないでしょう。柱って順応性が高いのね…)

おやすみ月奈。と言って扉を閉めて去っていく杏寿郎の足音は、普段よりもゆっくりではあるが、月奈のようにフラフラしている様子は無い。

「…本当に克己的だわ…私もあれぐらいに己を律して治療に挑まなきゃ駄目かしら」

しばらく考えてみたが、自分には無理だという最終結論にたどり着いた月奈は布団を被り目を閉じた。
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