第8章 最終選別
天「おぅ、煉獄!任務終わったのか?」
煉「む!宇髄か!俺は西での任務帰りだが、宇髄もか」
夜が明け始めたあぜ道を、天元と杏寿郎は並んで歩く。
向かう先は、藤襲山の麓だ。最終日の今日、生き残って山を下りてくると信じているが、やはり落ち着かない二人。
天「月奈は隠を希望だから、玉鋼は選ばずに階級刻みと説明だけで下山すんのかね」
多分な、と頷く杏寿郎は鴉を肩に止まらせ、いつでも飛ばせるように準備している。月奈の姿を確認したら生家にでも報告を飛ばすのだろう、予想できた天元は苦笑する。
ー月奈に対して過保護だろ、と言いたいが俺もこんなところまで任務終わりに来てる以上同じか。
少しずつ白んでいく空は、雲が少なく青い空が広がっている。今日の天気は良さそうだ。
ふと二人が山の入口を見ると月奈が見知らぬ人物に肩を貸してもらい歩いてきていた。
肩を貸す人物は真っすぐ前を見て何かを月奈と話している。ともすれば冷たいという印象を持たれそうな整った顔の人物だ。
天「へぇ、七日間で仲間を作って生き残ったか。こりゃまた派手な女と仲良くなってんな」
雅雄に気の抜けた笑顔を向ける月奈は、声がした方へ顔をゆるゆると向けると、二人の姿を認めた瞳が見開かれた。
「天元様!杏寿郎様!任務からお帰りですか…っわ!」
二人の元へ寄ろうと踏み出した足は力が入らず、前のめりに地面に倒れこむ寸前で抱き留められる。
雅「…お迎えの方ですか?せっかく無傷で帰還なのですから、家に戻るまで気を付けてください」
小声で囁いた雅雄は苦笑する。
「ありがとう、朝霧様。気を付けますね…ひっ!?」
体を起こすと、目の前に天元と杏寿郎が居て月奈は驚く。と同時に杏寿郎に抱き上げられていた。
煉「うむ、ケガはないようだな月奈!朝霧…少女といったか。君も最終選別を突破したようだな!これから共に頑張って行こう!」
雅「こちらこそよろしくお願いします」
ニコリと微笑んだ雅雄だったが、声までは変えられない。
それじゃあまたね、と杏寿郎に抱き上げられたままの月奈の手を取り唇を寄せる。
颯爽と月奈を抱き上げた杏寿郎が余程気に喰わなかったのか雅雄はわざと声を出すことで性別を知らせたのだった。