第7章 試練
ー眠ったか…
穏やかな寝息が聞こえ始め、杏寿郎はゆっくり目を開く。
腕の中では月奈が規則正しい呼吸を繰り返し眠っている。
「…何をしているんだ俺は」
ポツリと呟く声は自嘲を含んでいた。
恋慕すら知らないこの無防備な少女を誰にも渡したくない、そんな独占欲がふとした時に顔を出してしまう。例え千寿郎であっても、どれだけ小さな少年でも、月奈に触れている姿を見るとチリチリと胸で何かが燻る。
「鬼どころか、人にまで敵対心を抱くとは。よもやよもやだな…」
本当は最終選別になど行かせたくないが、それを奪えば月奈は生きることを諦めてしまうと知っている。
しかし、最終選別で命を落とす可能性もある。
どちらを選んでも月奈には危険な道。
「どうか生き抜いて、ここに戻ってきてくれ」
静かに眠る月奈に呟きを落とすと、月奈の寝息に誘われるように杏寿郎も眠りに落ちていった。