第6章 日常
これでは、まるで、
本当に美玖を好いているようではないか。
……いや、違う…のか?
本当に違うのか…?
正直、恋やら愛やらとは無縁の人生だった。
女子と接する機会もほとんどなかった。
自身の美玖に対する想いが、
俗に言う恋慕の情なのか…
家族愛のようなものなのか、
杏寿郎には、判断が難しかった。
…師範!お待たせしました!
先程の簪の会計を終えて、
美玖が駆け寄ってくる。
いや、大丈夫だ!
いい物が見つかって良かった!
他には、見たい物はあるか?
あとは、もう大丈夫です!
師範は何かありますか?
俺は、特にないな!!
あ、いや、そうだな…
千寿郎に何か、甘味でも買っていくか!
途中で眠ってしまったからな!
!それはいいですね!
千寿郎くん、きっと喜びます!
2人は、近くの和菓子屋に立ち寄る事にした。
…またも、商品棚にかじりつく美玖。
うわぁ〜!
こんなに可愛いお菓子、初めて見ます!
店内には、色鮮やかな菓子が、
所狭しと並んでいた。
美玖と共に、
千寿郎が好きそうな物をいくつか選んだ。
美玖は結局、
自分用にも大量に買い込んでいたが。
土産を買い、
両手に菓子をぶら下げて帰路につく。
…今日は、ありがとうございました!
とっても楽しかったです…!
美玖はそう言って
にっこりと笑いかけてくる。
ああ!俺も楽しかった!
たまには街に出るのも悪くないな!
それに、美玖の着物姿も良かったぞ!
母上の着物、よく似合っている。
あ、ありがとうございます…っ
実は、髪型も少し、
瑠火さんを真似てみたんです。
大人っぽく見えましたか?
少し、いたずらっぽい笑みを浮かべ、
美玖は杏寿郎に返事をした。
…ふっ
杏寿郎は一つ笑を溢すと、
ああ!大人っぽかったぞ?
迷子になってしまうまでは、な?
〜〜!!
師範の意地悪っ!
はっはっはっ!
……
夕陽に照らされ、
仲睦まじい様子で歩く2人は、
側からみれば恋仲の男女にしか見えなかった。