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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




そして私の恐怖もおさまっていた。

こんなの、初めてだった。
私だって歳を重ねてきた。
子どもの頃のままじゃない。
でも、
ふとした事で、さっきのようになってしまう。


涙も震えも、とっくにおさまっているのに、
宇髄さんはいつまでも私を離さなくて、

でも私からも、離れようとはしなかった。







暗くなって、辺りが静かになっても、
私たちはそこにいた。
壁にもたれて
床に座り込んだ宇髄さんに背中を預けて、
隙間を埋めるように寄り添っていた。

両膝を立てて、その膝を作業台代わりに、
私は昼間に仕入れたちりめんでお花を作っていく。

宇髄さんは黙って、後ろからその様子を眺め、
私の邪魔にならない程度に抱き寄せたり、
こめかみに口づけたりしていた。

素材作りに集中していた私は
ふと、
この変テコな状況に気がついた。

「あのぅ、宇髄さん…」

「んー…?」

後ろから私の肩に顎を乗せて
ほっぺたを寄せてくる。

私は何故か、くらりと眩暈がした。

さっきまでは、
半分、作業に意識がいっていたからあまり感じなかったが、
手を止めた今、全意識が宇髄さんに行くわけで…。

「ちょっ、と…近すぎですよね?」

私はほっぺたを離すように、
そぅっと顔を背ける。
すると、剥き出しになったうなじに
触れるか触れないかのタッチで口づけされた。
瞬時に、ビクッと体が跳ね、

「っ…やっ!」

私はそこを手で押さえ、
宇髄さんから大きく飛びのいた。
何だか、すごく気まずい。

どうしていいかわからなくなって、
そのまま動かなくなった私のお腹に、
後ろから腕を回して
そっと引き戻す宇髄さん。

「離さねぇよ」

わざと耳元で言う宇髄さんに
やっぱりくらくらする私は、

「や…あの…」

彼を少し押しやった。
そんなの、モノともしない宇髄さんは

「ダメだ。
お前がどんだけ大切か、体に教え込んでんだから」

その台詞通り、さっきから私の手を握ったり、
髪を撫でたり……
私がさっき、彼の手を恐れた事をやり直しているように感じた。

加えて、おでこやほっぺたに繰り返される、
たくさんの口づけ。
まったく免疫のない私には
違和感しかない状況。
でも、
嫌ではないから、不思議だ。
私は、この人を受け入れていると、言う事だろうか。




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