第7章 それぞれの想いはーー
(‐空白の時間*手塚‐)
あの二人が跡部の屋敷を後にして数分、
俺を含め皆は、呆然とする事しかできなかった。
ー女の子泣かせるなんて最低よ。それに、それを黙って見てる他の3人も最低。ー
最後に言われた、彼女の言葉が胸に刺さる。
当然だ、俺たちは、女子二人を泣かせてしまったのだ。
…父さんや母さんに知られたら確実に殺されるな。
あの目はウソを言ってるような目ではなかった。
だが、漫画の世界にトリップ?その世界で彼女たちと過ごしていた?
その信じられない事実を受け入れろと言う方が無理だろう?
それなのに、どうしてだ…あの涙が、俺の心に重く残った、なんて。
『…不二、大丈夫か?』
『うん。大丈夫だよ、手塚』
そう言う不二の顔は真っ青で。
『…皆。僕、先に帰るね』
『ーーあぁ、』
『車で送らせるぜ?』
『あははっ、女の子じゃないんだから』
軽く笑って、不二はそう言ったが、大丈夫そうに見えなかったし、
不二の態度がさっきから何か引っ掛かる感じがした。
『いや、大丈夫だ跡部。俺も帰る。どうせ不二の家は通り道だからな』
『そうか?』
『あぁ。不二、“送る”ではなく“一緒に帰る”と言う事でいいか?』
『…うん、分かった。じゃぁ、帰ろうか』
そのまま、俺と不二は跡部の屋敷を後にした。
長い沈黙、俺たちは一言も話す事なく歩く。
聞きたい事はある、ーーだが、
それをどう切り出していいのか分からない。