第2章 目覚めると
チュンッ…チュンッ…
ーんっ…
小鳥のさえずりに
うっすらと目蓋を上げる
目の前には
乱れた浴衣から覗く
鍛え抜かれた胸板
顔を上げると
まだ眠っている杏寿郎さん。
普段は炎柱として、
沢山の人を守り支えているすごい人。
でも、寝顔は、
少し少年らしさも残っているように思える。
いつもはしゃきっと上がっている眉も
今は少し下がっていて可愛らしい。
こんな杏寿郎さんを見られるのは
私だけなんだ……
なんだか胸がきゅーっと
締め付けられるような気がした。
…杏寿郎さん、大好きです。
小さな声で呟いて、
はだけた胸元に顔を埋めた。
うむ。俺も大好きだ!
いや、愛している!
…!?
きょ、杏寿郎さん…!
起きていたんですか…?
うむ。つい先程。
美玖の視線を感じたからな。
……!は、恥ずかしい…。
し、視線で起きるなんて、
そんなの、反則です…。
柱だからな!
呼吸を極めれば色々な事ができる!
美玖、こちらを向いて欲しい。
恥ずかしくて俯いてしまった私は、
ゆっくり杏寿郎さんを見上げた。
それとほぼ同時に
杏寿郎さんの顔が、
目の前いっぱいに広がり、
互いの唇が重なっていた。
軽く触れてすぐに離れていったので
少し、寂しさを感じてしまった。
物足りないか?
心を読まれたのだろうか。
ハッとして、杏寿郎さんを見ると、
ニヤリとした笑みを浮かべている。
彼らしくない、意地悪な顔だった。
そ、そういう訳じゃないです…!
思ってもない事を口にすると、
そうか。
と言う声が聞こえるのと同時に
私の視界は反転した。
天井と、杏寿郎さんが見える。
美玖、嘘はよくない。
これはお仕置きが必要なようだ。
覚悟するといい。
言葉とは裏腹に
びっくりするほど甘い声が
耳元でささやくように告げた。
私は、ゆっくりと目を瞑り、
彼から与えられるお仕置きに
身も心も委ねた。
心の底から溶けるような
甘いひとときをあなたと…
fin