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炎柱

第4章 月明かり 杏寿郎side




煉獄様…か。

今会ったばかりだ。

当然といえば当然だが、
ずいぶんと距離を感じた。


そうか。
俺はー…


不可解な言動に対する疑問が
この一瞬で解けたようだ。

俺は、美玖に、
今会ったばかりの彼女に…。


様はいらない。
杏寿郎と呼んでくれ。

美玖。


そのまま、
震えている彼女を抱きしめた。


腕に収まる美玖は、
とても小さく、
少し力を入れたら折れてしまいそうだった。

と同時に、
いつまでもこうして抱きしめていたいという、
自身の欲が湧き上がるのを感じた。


情けないことだ…。
柱として、不甲斐なし…!


震えが止まった様子の彼女の顔を見ると、
少し照れたような、戸惑うような、
困っているような表情をしていた。


(……愛い!!)


叫びそうになった言葉を
なんとか飲み込み、
誤魔化すかのように笑顔を作った。


さぞ怖い思いをした事だろう。
家まで送っていこう。


そのまま美玖の手を取り歩き出す。


小さな手から伝わる体温が心地よい。

早く送り届けなければと分かってはいるが、

名残惜しく感じてしまう。


自分に、このような一面があったとは…。


ふいに、美玖が手を握ってきた。

たったそれだけの事だが、
一瞬で体温が上がったようだ。

不甲斐なし…不甲斐なし…。


美玖の手を握り返し、

そのまま歩き続けた。


月が、綺麗な夜だ。

今までで、1番、綺麗な月だった。


fin

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