第4章 ep.03 彼と彼女の話
リディア
『大丈夫?』
地面に四人が倒れると、リディアは無表情だった顔を心配気に変えて俺を起き上がらせた
フリント
『大丈夫…ありがと』
弟/妹
『あ、ありがとう…助けてくれて』
お礼を言う俺等に優しい笑みと手の温もりを残してリディアは去っていった
それから、俺が17歳になった時だ。
その頃にはもう用心棒をやってて、その帰りだったな
フリント
『……あれは…』
吸血をしてる吸血鬼を見付けた。
良く見るとそいつは涙を流しながら吸血してた…が、俺が気になったのはそこじゃねぇ。
腰より少し長い銀髪で黒い毛先…少し垂れ気味の大きい目の中の赤…あの日から全く姿が変わってないリディアだった。
フリント
「その日から俺はリディアと暮らす様になった」
話終えたフリントは小さく息を吐き出した。
それを聞いていたノムは僅かに視線を泳がせてから、口を開く
ノム
「あんたは…その、吸血してるとこに会って怖いとか思わなかったのか?」
フリント
「ん?いや、守ってやんねーととしか思わなかったな」
ノム
「何でだ?」
フリント
「ガキの俺等を助けてくれたリディアは凄く強くて格好良かった。なのに、その時目の前に居たのは泣きながら吸血してるリディアだった。…強く見えたあいつは本当は弱いんだって、そう思ったら守ってやらないとって。その日から今まで俺の思いは変わらねぇ、守って一緒に乗り越えるってな」
ミフウ
「……何だか素敵だね」
ミフウは口角を上げながら染々とした様子で声を発した。
それを聞いたフリントは苦笑するように
フリント
「そうか?…まぁ、あとは初恋の相手だったからだな多分」
予想もしていなかった単語にノムは不思議そうに首を傾げ、ヴィンスは僅かに片眉を上げた
ノム
「初恋?」
フリント
「今思えば、だけどな。ガキの俺は多分リディアに恋したんだ」
ヴィンス
「…今は?」
フリント
「は?」
にこにこと笑みを向けてくるヴィンスに、フリントは迷いなく…それはまるで無意識に牽制する様に
フリント
「現在進行中だ」
ミフウ
「おお…男らしい」
ノム/ヴィンス
「………」
感心するミフウ以外は何故か複雑そうだったが、自覚はないようだ