第4章 ep.03 彼と彼女の話
全員が仲間としての自覚を持ち和やかな空気になった所で、リディアが何かに反応して何もない闇を見詰める
フリント
「どうした」
リディア
「向こうから…何か音がする」
人間の耳では到底聞こえる筈のない音をリディアは聞こえると言う。
ヴィンス
「向かってみよう」
リディアの後に続いて皆で歩いて行く。
すると、微かに歌が聴こえてくる
リディア
「?……っ、皆聴いちゃ駄目!」
慌てたような彼女の声に全員が反応して耳を塞ぐが…
リディア
「フリント…!」
僅かに遅れてしまったフリントが石化してしまい、それを見たリディアは目を丸くし慌ててフリントに近付き彼の両頬をリディアが挟む
リディア
「フリント…どうしよう…っ…フリントがっ」
ヴィンス
「落ち着くんだ、リディア」
目に見えて動揺するリディアを耳を塞いだままのヴィンスが静かに声を掛ける。
その声を聞くとリディアは落ち着こうと何度も呼吸を整え、改めて石化したフリントを見る
リディア
「……多分、吸血鬼以外が聴くと石化する歌……だから、人ばかりが石になっちゃうんだ。……けど、やった本人を倒せば…きっと、皆戻る」
落ち着きを取り戻し始めたリディアが考えながら呟き全員に向き直り
リディア
「お願い。フリントを…見てて」
ノム
「おい、一人で行くつもりかよ?」
耳を塞いでいても僅かに聞こえるリディアの声に簡単に同意する者などおらず
リディア
「この歌を聴いても平気なのは私だけ。…それなら私が行くべき」
ミフウ
「……あたしも行く」
リディア
「でも…っ」
ミフウ
「見な。あたしは常に耳栓持ってるんだよ」
睡眠を邪魔されるのが嫌な彼女は持っていた耳栓を見せた。
予想もしていなかったミフウの言葉にリディアは慌てて止めようとするも、聞く前に耳栓を嵌めてしまった
ミフウ
「大丈夫。…あたし読唇術、出来るから」
リディアがヴィンスを見ると彼はゆっくりと頷いた。
そうすると彼女は覚悟を決めた様にミフウへ視線を向け
リディア
「行こ、ミフウ」
ミフウは笑いながら頷き、それを合図に二人は森の奥へと走っていく