第14章 ep.13 守りたいもの
フリント
「……っく…」
屈強なフリントの腕を簡単に掴み床へと投げるモーリスの表情に笑顔などない
ヴィンス
「くそ…っ」
ミフウ
「…っ…!」
形勢逆転かと思われたが、モーリスには傷一つもつける事が出来ない。
ずっと動き回っていた五人も流石に息が切れ始める
モーリス
「何だ…もう終わりか」
面白くなさそうにモーリスは呟くと自分の近くにいたミフウの首に刃を向ける
ミフウ
「……っ」
ノム
「ミフウ…!」
振り翳された刃は勢いをもってミフウの首へと躊躇いもなく下ろされた
──キンッ
ミフウ
「……っ?」
逃げる暇もないその瞬間に死を覚悟して目を瞑っていたミフウだったが、痛みではなく高い音が響き目を開くと
ミフウ
「リディア…っ」
リディア
「皆を…殺させない!」
ヴィンス
「リディア…」
フリント
「あいつの刃が折れてる」
モーリス
「ほぉ…」
素早く動いたリディアがダガーで、モーリスの刃を弾くとその勢いで彼の刃は折れていた。
それを見るとモーリスは愉しげに笑みを浮かべ、見えない速度でリディアのダガーを蹴り飛ばすとリディアを腕へ納める
リディア
「離して…!」
モーリス
「仲間を殺されたくないのだろう?…ならば、大人しくしろ」
リディア
「……っ」
耳元で告げられた言葉にリディアは息を吐いて、抵抗するのをやめた。
ノム
「おい、待て!」
ヴィンス
「ノム…っ」
ノム
「くそ、行かせて良いのかよ!」
ミフウ
「今のあたし等では歯が立たなかっただろう」
ノム
「だからって…!諦めるのかよ…っ」
フリント
「諦めるわけないだろ」
シディ
「嗚呼…そうさ。奴の良いようにはさせない」
追い掛け様とするノムをヴィンスが止めると彼は声を荒げたものの、全員の声に落ち着きを取り戻す。
全員が悔しそうに奥歯を噛み締めながら扉の向こうに消えるリディアとモーリスの背中を見送った