第2章 ep.01 憎むべき存在
それからは他愛ない会話をしながら三人は歩いて行く。
だが、段々とリディアの足取りは悪くなり…止まってしまった
リディア
「……街に…向かってるの?」
フードから覗く彼女の唇は僅かに震えていた
ヴィンス
「嗚呼、そこに拠点があるからね。嫌かい?」
リディア
「うん…街は人が多いし香水の匂いが強いし、人間同士の差別も…あるから」
ヴィンス
「大丈夫だよ。俺達の拠点は街から少しだけ離れてる。貴族だって滅多に通らない場所だ」
フリント
「俺がいる。大丈夫だ」
俯いて動かなくなったリディアの背中をフリントが叩いてかけられる力強い言葉に彼女は素直に頷いた。
ヴィンスはその様子に僅かに安堵した
─────…
────…
馬車を引く蹄の音や沢山の人の笑い声が段々と大きくなり、出たのは大通り。
リディアはその賑やかさに眉をひそめる。
リディア
(…やっぱり香水の匂いが強い…)
ヴィンス
「悪いね、此処を通らないと拠点には行けなくて」
リディア
「大丈夫。…ありが…「まぁ、何てこと!」
リディアの声を遮って聞こえたのは女性の声。
そちらに顔を向けると裕福な婦人であるのが見ただけで分かる綺麗なドレスを纏っていた。
婦人
「誰かその汚い鼠を捕まえてちょうだい…!」
リディア
「鼠…?」
綺麗な装飾が施された手袋を纏う指が示す方へリディア達が視線を向けると、ボロボロの服を纏った少年が転びそうになりながら彼等の方へ走ってきていた
それを見るとフリントは面倒臭そうにしながらもその少年の腕を簡単に捕まえた。
少年
「…っ…!離してくれ…!」
フリント
「暴れんなよ。これはお前んじゃないだろ」
少年
「金もってんだから少しくらいくすねたって平気だろ!」
そんな言葉を聞きながらもフリントは少年から鞄を取り上げた。
丁度、リディア達の方へやってきた婦人がフリントへお礼を述べる
婦人
「ありがとう。取り返してくれて…全く鼠には困ったものだわ」
そう吐かれた少年は婦人を睨み付けた。
すると、リディアは少年と婦人の間に壁を作るように立つ