第2章 ep.01 憎むべき存在
ヴィンス
「お、来たね」
朝がやって来てリディアとフリントは森へと向かった。
すると、約束通りヴィンスが待っていて呑気に手を振った
フリント
「あの二人はどうしたんだ」
ヴィンス
「あぁ…拠点で待ってるよ。…やぁ、さっき振りだね」
フリントから視線をずらして外套のフードを目深に被っているリディアに身体を屈めてヴィンスは手を振った
リディア
「えっと…さっきは、見苦しい所を見せてごめんなさい」
ヴィンス
「別に見苦しくなんかないよ。…君は吸血…っと、忘れてた」
話を続けようとしたヴィンスは、思い出したように言葉を止めて彼等に向き直る
ヴィンス
「俺の名前はヴィンス・ロナ。28歳、研究者…宜しくね」
風に吹かれて揺れる緑っぽい金の髪が光り、軽く目にかかる前髪から覗く切れ長で少し大きい緑の目を細めて自己紹介をする
フリント
「歳って言う必要あんのか」
ヴィンス
「ははっ、何と無くさ」
フリント
「あー…フリント・ニールズ。っと、25…用心棒だ」
意味が分からないという反応をしたフリントだったが、しっかりと彼を習って歳まで言うものだからリディアは戸惑いつつも顔を上げ
リディア
「リディア・フォーレスト…歳は、もう覚えてない。多分…三桁…かな」
長生きである吸血鬼は途中から歳を数えるのをやめてしまう為、聞かれると思っていなかったリディアは何と無くで答えた
ヴィンス
「二人とも律儀にどーも。で、さっきの俺の質問に戻って良い?」
リディア
「うん」
ヴィンス
「リディアは吸血してる時…どうして泣いてるの?」
リディア
「……止めたいのに止められないから。吸血衝動がきて我慢しても出来なくて…人間を殺してまで生きてる自分が嫌で、死にたいのに死ねないから」
フリント
「おい」
リディア
「…ごめんなさい」
ヴィンス
「成る程。…君は変わってるね」
彼女の話と死にたいと告げるリディアを止めるフリントを見てからヴィンスが口を開いた。
彼が今まで見てきた吸血鬼の中にそんな風に思っている者が居なかったから、素直に変わっていると思った