第12章 ep.11 潜入と不安材
ヴィンス
「俺は君が好きだ。……だから、恋人になってみないか?」
頭のどこかでは予想していたかもしれない言葉を直接投げられれば、いつの日だったかミフウと話した時に決意した事を簡単に破ってしまう言葉がリディアから溢れそうになる
リディア
「え…でも、私は…」
ヴィンス
「吸血鬼だからは関係ない。問題は君が俺を好きかどうかだ」
嬉しい筈なのに、やはり吸血鬼を言い訳にしてしまった自分を嫌だと感じた。
だが、ヴィンスの言葉でそれは違うと思い直し
リディア
「私…も、気付いたら…ヴィンスの事が好きになってた」
その言葉が返ってくると正直、自信がなかったヴィンスは目を丸くしたが次には柔らかく笑んでいた。
ヴィンスが人差し指の甲でリディアの冷えた頬を軽く撫でフェイスラインをなぞって、俯いてしまった彼女の顔を上げさせ…ゆっくり唇を重ねる
リディア
「ヴィンスは」
ヴィンス
「ん?」
リディア
「変な人だね」
ヴィンス
「何でだい?」
リディア
「私を好き…なんて」
唇が離れ瞼を持ち上げたリディアが溢した言葉にヴィンスは不思議そうにしたが、彼女からのそれには自信満々に笑って
ヴィンス
「そんな事ないさ。皆君を知らないだけ…知ったら、皆君を好きになる」
リディア
「そおかな…」
不安気にするリディアに強く頷く。
ヴィンス
(実際、君を知ってる拠点の皆、君の事好きなんだよ)
ヴィンス
「ごめんね、抜け駆けして」
リディア
「え?抜け駆け?」
ヴィンス
「いや、こっちの話さ」
医務室で苦しんでいるだろうフリントとノムへ謝罪の言葉を空に向けて放つ。
だが、その言葉の意図が分からなかったリディアは首を傾げた
互いにいつ相手を好きになったか、何をきっかけに好きになったのか…そんな事は分からなかったが、互いに相手が大切である事は事実。
気が付いてから恋人同士になるまで早くまだ実感が二人は湧かないが…満たされているのには違わなかった。
怪我を負っているフリントとノムがいて、まだ何があるか分からず不安要因がなくなったわけではない─…