第12章 ep.11 潜入と不安材
心に余裕が出来た翌日、ヴィンスへ届いた依頼に全員が首を傾げた
リディア
「潜入…?」
ヴィンス
「嗚呼。でも、今回は吸血鬼の討伐ではないみたいだね」
ノム
「どういう事だ?」
ヴィンス
「貴族たちの間で幼い吸血鬼を売買して…飼っている、らしい」
ヴィンスはリディアへ聞かせるものではないと思ったものの、隠すのは仲間として信頼していない気がしてありのままを告げた。
だが、リディアだけでなくその場にいた全員が嫌悪感を露にした
フリント
「何だよ、それ」
ヴィンス
「はぁ…しかも最悪なのがその利用方法だ」
ミフウ
「利用方法?」
ヴィンス
「そこにいるのは男の子達だけで、売買をするのは女貴族だけなんだ。…理由はシディがしている事を幼い頃から教えて自分の欲を満たすため、だって」
リディア
「……まだあまり理解できない頃からそれを日常として教え込んで自分を食事ではなく、主として見せるって事ね。…幼い頃なんて殺される確率が今よりも多いからそっちの方が良いのかもしれない…だけど、そんなのは何か許せない」
フリント
「だな。吸血鬼はエサとして俺等、人間を見てるからその辺はムカつくが…だからって、生きる術を勝手に奪っちまうのは間違ってる」
ミフウ
「そうだよ。…その潜入とやら、やってやろうじゃないか」
ヴィンス
「嗚呼、そうだね。ただ潜入、出来るのは男だけなんだ」
ノム
「は?」
理解ができない条件に全員は不思議そうにヴィンスを見る
ヴィンス
「その売買が行われている屋敷で働いている人は男しかいないらしくて、女性である君達は潜入できないよ」
リディア
「………出来るよ」
ヴィンス
「え?」
リディア
「男の人に変装すれば良い」
ミフウ
「おお!それ良い」
リディアの提案にミフウは、それしかないというように指をさす。
だが、ヴィンスは渋るような仕草を見せる
リディア
「ヴィンスお願い。…私もその子達を助けたい」
じっと真剣な眼差しを向けられると、今ここで一番もどかしさを感じているのは彼女ではないかと思ったヴィンスは頷く事しか出来なかった