第11章 ep.10 一時の休息を
リディア
「はぁ…」
疲れを吐き出すようにリディアは自分だけしかいない部屋で溜め息を溢す。
モーリスが現れてから数日が経ったが、その数日の間にも何度かモーリスの配下にいる者達がリディアへ襲い掛かってきた
その度に必ずリディア達が勝つのだが、人数の多さに流石のリディアも疲れが溜まっていた。
最近では外へ出る回数が減った
─コンコン
リディア
「はーい」
部屋にノック音が響けばリディアは扉を開ける
ヴィンス
「や、リディア」
リディア
「ヴィンス。どうしたの?」
ヴィンス
「前に遠出しようって言ったの覚えてるかい?」
リディア
「うん、覚えてるよ」
ヴィンス
「今日、行こう!」
リディア
「えっ?」
突然の誘いにリディアは驚いてつい声が大きくなってしまう
リディア
「ほ、本当に今日行くの?」
ヴィンス
「勿論!さ、準備して?」
ヴィンスに身体の向きをかえられ背中を押して室内へ戻されれば戸惑いしかなく
リディア
「な、何持って行けば良いの?」
ヴィンス
「そうだね…着替えがあれば何とかなると思うよ」
リディアは頷くと少し大きめの鞄へ数着の着替えを押し込む。
すると、それをヴィンスが持ち上げてしまいリディアはヴィンスへ声を掛ける
リディア
「良いよ、ヴィンス」
ヴィンス
「良いから良いから。これくらい俺に持たせておきなさい」
ヴィンスに笑みを向けられるとリディアは思わず固まってしまった。
その笑みは今までに見てきたヴィンスのものなのに、まるで違うように思える程にリディアの心境は彼女の知らない所で変化していた
リディア
「ありがと」
ヴィンス
「いいえ。あ、薬は持ったかい?」
リディア
「うん、その鞄にちゃんと入れた」
その言葉に頷くとヴィンスとリディアは拠点の外へと出た