第4章 鍛錬と最終選別
それから数刻、更紗と千寿郎は洗濯や掃除などに勤しみ、杏寿郎は体を休めていた。
だが、そういった時間は早く過ぎるもので杏寿郎が任務の為に出掛ける時刻となった。
杏寿郎が隊服を着て準備をしている間、更紗と千寿郎は夕食にと片手間で食べられる具入りのおにぎりをこさえていた。
「兄上が出発される度、いつも心配になるんです。帰ってこなかったらどうしよう……と」
小さな手で大きなおにぎりを握りながら、千寿郎は生まれて初めて自分の心の内を話した。
更紗は千寿郎の不安げな表情に自分も不安になるが、少なからず頼ってくれているから弱音を吐いているのだと理解し目線を合わせて答える。
「千寿郎さん、では杏寿郎さんが出発した後、私が助けて貰った時のお話を聞いてくださいますか?きっと不安なんて吹き飛びますから」
千寿郎は杏寿郎から鬼狩りの話を聞くが、こうして杏寿郎に助けて貰った人から話を聞いたことはない。
先程の約束を覚えていてくれた事、聞いた事のない自分の兄の活躍を第三者目線で聞ける事を嬉しく思い、考える間もなく頷いた。
「はい!ぜひ聞かせてください!実は聞かせていただくのが楽しみだったのです!」