第14章 研究と緊急招集
蝶屋敷への道中、野良鬼に遭遇するが天元が難無く討伐し特に時間を取られることはなかった。
だが、更紗の咳が蝶屋敷へ近付くごとにぶり返して息も絶え絶えとなり、まともに呼吸も出来ていないようだ。
「要、悪いが先に蝶屋敷へ赴いて胡蝶へ伝えてくれ。更紗を連れて邪魔をする、咳が酷いので処置を頼む。詳細は到着後に話す、と」
「ウム!」
杏寿郎の近くを飛んでいた要は一言残し、夜空を高速で羽ばたいて行った。
あともう少しで蝶屋敷へ到着するところまで来たが更紗の喉が限界を迎える前に潤してやらなければ、今度は喉が切れてそこから血が出るかもしれない。
「宇髄、更紗に水を飲ませる。少し待ってくれ」
「あぁ……いくらでも待ってやるから急ぐなよ。ゆっくり飲ませてやれ」
杏寿郎は頷くとその場で跪き、更紗を脚の上に預けてやって水の入った竹筒を口元に持っていく。
「焦らなくていい、少しでも喉を潤すんだ。飲めるか?」
「ゲホッ……はい」
杏寿郎が飲みやすいように傾けてくれている竹筒の飲み口に口をつけ、咳が出る前に一口水を含み喉へと流し込む。
いつもなら喉の痛みなど感じる暇もなく力が勝手に回復してくれているが今は上手く自己修復機能が働いていないようで、喉の痛みを和らげてくれる水の有り難さが身にしみた。