第13章 新居と継子たち
「あの……」
それでも何か話そうとする更紗に杏寿郎は足を止め、天元がそばに居る事など気にもせず、その唇に自らの唇を押し当てて閉じさせた。
更紗が驚き顔を真っ赤にして目を見開くのを杏寿郎が瞳に映すと、その瞳を僅かに細めて唇を離す。
「今は手を使えんからな!君が話そうとする度にこうすることになるぞ」
冗談でなく本気の目だ。
だが、いたずらに言っているわけでも、更紗の反応を愛でようとしているわけでもない。
心配そうに揺れる瞳に、更紗は慌てて両手で口を押さえ何度も頷いた。
「姫さん黙らせられんの、お前しかいねぇな」
「それもそれで困ったものだがな!宇髄、俺は着替えて更紗の身の回りの準備をするので、悪いが君も着替えを済ませてくれるか?それが終われば母屋の居間で待っていてくれ」
羞恥の欠片も見せず、歩を進めながら先へ先へと物事を考えている杏寿郎に、天元は従うことにした。
「分かった。俺のことは気にせずしっかり準備してやってくれ!じゃ、また後でな!」
「あぁ!」
こうして更紗は一切口を挟むことを許されぬまま着々と準備を進められ、まさかのその日のうちに蝶屋敷へととんぼがえりすることとなった。