第13章 新居と継子たち
杏寿郎の声を合図に追いかけっこ……1人を追いかける鬼ごっこが始まったが、さすがに更紗も気を緩めていてはすぐに捕まってしまう。
なにせ全員が常中を習得しており、動きが一般人とは全く違う。
伊之助を避けたと思えば、その後ろから炭治郎が腕を伸ばし更紗の手首を掴もうとしてくる。
善逸に限っては顔をニヤけさせながら、両腕を伸ばし抱き着こうとしている。
更紗は善逸の両腕から逃れるため、その場で身をかがめすぐさま横へ飛び退き、突進してくる伊之助を体を捻って躱す。
「師範!これに私の勝利条件は……あるのでしょうか?!」
「四半刻逃げ切れば更紗の勝利だ。それまで気を緩めず、どのような手を使っても逃げ切れ!」
つまり相手を気絶させて逃げ切るという手は使えない。
どうあっても四半刻追いかけまわされ、逃げ切ることが更紗の鍛錬なのだ。
「まだ半分……逃げ切れるのでしょうか?」
心に一抹の不安を抱えていると、今度は3方向から同時に腕を伸ばされ逃げ道を防がれてしまった。
このままだと逃げ切れないと判断した更紗は、瞬時に空気を肺一杯に吸い込み、血液・酸素・力を全身に一気に行き渡らせる。