第13章 新居と継子たち
「……はい、分かりました」
全然分かっていない顔で分かったと言われ、杏寿郎は苦笑いを浮かべつつ槇寿郎へと向き直った。
槇寿郎も杏寿郎と同じように、更紗の表情を見て苦笑いを浮かべている。
「と、とりあえず、更紗もそんな顔をしていないで杏寿郎を信じろ。杏寿郎の人……鬼?を見る目は確かだ。万が一の時の話しであって、そうなると決まっているわけではないのだから」
槇寿郎に諭され、ようやく表情を緩めて更紗は頷いた。
「はい!よろしければお義父さまも、千寿郎君と一緒にあちらのお家に遊びに来てください!腕によりをかけてご飯を作ります」
全てを納得してはいないだろうが、こうして目の前で笑う更紗に杏寿郎も槇寿郎もそれ以上何も言わずに笑顔を向けるにとどめた。
「あぁ、そのうち邪魔させてもらう。ほら、新しい継子が待っているのだろう?荷物も移動させないといけないのだ、もう行きなさい。必要なものはここから持ち出して構わない。人手が足りんようなら俺も千寿郎も手伝うが」
「ご心配には及びません、父上!俺と更紗の必要な家具はこちらで揃えます!継子たちが最低限必要な物はお言葉に甘えさせていただきますが、鍛錬も兼ねて自分たちで運ばせますので!」
鬼だ。
隣町と言えど決して近くはないのだ。
その距離を重い荷物を抱えさせて移動させるらしい。
槇寿郎のひきつり笑いを見ながら、杏寿郎は意気揚々と…… 更紗はこれから辛い思いをする継子たちを思い、眉を下げて槇寿郎の部屋を後にした。