第13章 新居と継子たち
頭を下げていた2人は槇寿郎の言葉に驚き、勢いよく頭を上げてその顔を見つめる。
そこには先ほどまでの緩んだ表情ではなく、厳しい表情で思わず緊張してしまう凛とした本来の当主の顔をした槇寿郎の姿があった。
「なぜ知っている……と言う顔をしているな。不自然な木箱を背負っていたからと言いたいところだが、お館様から事前に額に傷のある少年と、その妹である鬼の少女を鬼殺隊に迎えたと知らせがあった。そして万が一、こちらに赴いた際には頸を斬らずに受け入れて欲しいとな」
産屋敷家当主には少し先の未来が視えると言うが、こういった事も視えてしまうらしい。
お館様の手回しの良さに2人は感服しつつも、未だに厳しい表情を崩さない槇寿郎に緊張を走らせる。
「そうでしたか。鬼と聞くと警戒されるお気持ちは分かりますが、あの少女は稀血である更紗の血を前にしても、理性を保ち襲いかかって来ることはありませんでした。それに先の任務では血を流しながら、人々を懸命に守っておりました。その姿は紛うことなき鬼殺隊士、俺はそう確信して新居に迎える決心をした次第です」
槇寿郎は2人の表情を見る。
柱を務める杏寿郎はその言葉の通り、更紗もそれに完全に同意し従うという意志がその表情からひしひしと伝わる。