第12章 夢と現実 弐
突如として夜明け前に現れた、十二鬼月の中でも圧倒的な強さを誇る上弦ノ鬼。
その強さを前に、柱である者でさえも敗れ命を失うことも珍しくないという。
その強さを自覚しているからこそ、あと半刻もすれば日が昇るこの時にでも姿を現したのだろう。
人間ごときに負けるなど考えてもいないからだ。
更紗は迫りくる手を寸でのところで避け、一気に足へと惜しみなく力を流し込み回復して近くに落ちている日輪刀を握りしめ応戦する。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!」
まさか上弦の鬼も、自分より遥かに華奢で僅かな闘気しか感じさせない矮小な存在に応戦されるとは思ってもみなかったようで、手の平を刀で縦に裂かれたことに驚き……また喜んでいた。
「お前、なんだその闘気!先ほどまで僅かなものしか纏っていなかったではないか!だが、まぁ……お前では俺の相手としては力不足だ」
再び手を伸ばされ更紗は距離を取るために足に力を入れて後ろへと跳躍するが、上弦の鬼からすれば子供が僅かに後退りするようなものなのだろう。
距離を取るどころかすぐにその距離を詰められ、更紗の手首に鬼の手が掠る。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」