第11章 夢と現実 壱
師範曰く
「治癒ばかりに頼るな。力が使えなかったときに痛い目を見るぞ」
とのことだ。
「……仰る通りでございます……はぁ、さっさと足の回復もしなくては。まだまだ鍛錬が足りま……」
ドゴォォーーーー!!
更紗が鍛錬不足を嘆き足の治癒を施そうと手をかざしたところで、背後から聞いたことのない轟音と地響き、冷や汗が止まらないほどの闘気が更紗を襲った。
まるで爆風のような猛烈な風が更紗の長くなった髪を煽り、砂埃と共に宙へと流させる。
「え、な……に?」
砂埃が落ち着き冷や汗の原因を探ろうと更紗が背後へ体を向けると、信じられない者が地面に片手をついた状態でこちらを見ていた。
「お前が月神更紗か?……弱いな。俺は弱い奴が心底嫌いだが、生かして連れ帰れと命令があった。来てもらうぞ」
手を伸ばすその者の目から更紗は視線を逸らすことが出来ず、圧倒的な冷たい闘気から這いずり逃げる意志さえも奪われた。
「……どうしてここに……もうすぐ、もうすぐ夜が明けるところだったのに」
負傷者が多く鬼殺隊剣士も先の戦いで消耗した矢先、更紗の目の前へ瞳に『上弦ノ参』と刻んだ鬼が突如として姿を現した。