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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第10章 裁判と約束


どこから仕入れた情報なのか実弥は問い詰めるが、しのぶはただ笑ってかわし、答える気配は全くない。

一種のからかいを受けた実弥はすっかりへそを曲げ再び扉のそばにドカッと腰を下ろし、足を揺らして苛立ちをおさめようとしている。

だが、先ほど自分の傷を瞬時に完治させ、傷跡をも薄くした赤い霧の正体が知りたいという思いだけが実弥をこの部屋にどうにかとどめていた。

「フフッ、少し意地悪が過ぎたかもしれませんね。さて、まだ皆さんとお話しをしていたいのですが、何分那田蜘蛛山での負傷者でこの屋敷は溢れています。今日は更紗ちゃんの血液を採取してお開き……とさせていただいて構いませんか?」

しのぶの言う通り、ここにはほんの2日前に運び込まれた怪我人が多く滞在している。
重傷者は更紗がほぼ対処したとは言え、善逸のように蜘蛛にされかけた剣士や軽傷者の治療には、それこそ猫の手も借りたいほどの状態なのだ。

様々な事が起き、その事を失念していた杏寿郎と更紗はしのぶに頭を下げた。

「あぁ、長居をしてすまなかった。更紗、今日は血液の採取だけしてもらい帰るとしよう」

「はい!しのぶさん、何から何までありがとうございます」

しのぶは多くの寿命を失ってもなお穏やかに笑う更紗に胸を締め付けられながらも、笑顔を返し平静を装って採血を行った。
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