第10章 裁判と約束
杏寿郎は更紗へ視線を送り体調を問うと、笑顔で頷いて応える。
「大丈夫です。私もお話ししたい事がありますので、後で聞いていただいてよろしいでしょうか?」
「もちろんです。では幾つか私の見解と……あと1つをお伝えします」
しのぶの見解によると、更紗が今回倒れたのはやはり急激な血液の減少が原因だった。
そしてあの苦い液体はしのぶが独自で調合した造血薬で、血液を製造している器官に働きかけ血の生成を急激に促すものらしい。
力に関しては普段使っているものが制御可能な事を考えると、今回の力でも制御は可能なはずなので少しずつ慣れていくしかないとのことだ。
あとは懸念していた、糧が尽きる前に力を使用しても、それは通常量ほどの消費で済んでいるようだが、これに関しては後日きちんと報告してくれる事となった。
だが更紗の体に相当量の負担がかかるのは変わりないので、しっかりと制御出来るようになるまでは安易に使用しないようにと注意が入った。
「今回の件はこれが私の見解です。何か質問はありますか?」
2人は今のところは思い浮かばないようで首を左右に振る。
「では何か分からない事が出て来たらいつでも聞いてください。あと1つ、伝えたい事…… 更紗ちゃん、貴女はおよそ10年、失っていると思われます」
更紗も杏寿郎も突然掲示された10年という年数にピンと来なかったが、失ったと言う言葉で察した。