第10章 裁判と約束
顔色のコロコロ変わる圭太に更紗は頭の中で疑問符を浮かべるが、あまり触れてほしくないように話題をふられたので、見て見ぬふりをすることに決めた。
「はい、隠の方がいらっしゃる所に行ってみようかと。いつもお世話になっているので、お礼に伺おうとしていたんです」
「え、前田いるけど行って大丈夫なのか?風の噂で月神に変な隊服送って煉獄様がお怒りだと聞いてるけど」
なんと他の剣士にまで前田の一件は伝わっているらしい。
「1人で近付いてはいけないと言われていますが、恐らく他の方もそばにいると思うので大丈夫かと」
事も無げに言っているが、圭太からすれば不安しかない。
もしその場に前田しかいなかった場合、誰にも助けてもらえず毒牙にかかるかもしれないのだ。
「嫌じゃなかったら俺が一緒に行く。煉獄様が怒るかもしれない状況は事前に回避してた方がいいと思うし」
圭太の提案に更紗の顔は笑顔で満たされるが、すぐに心配そうに眉をハの字に下げた。
「すごく嬉しいのですが、柱合会議は大丈夫ですか?すごく大切な役割だと思うのですが」
「まだ時間に余裕はあるから大丈夫。それに、俺も裁縫所って前から気になってたし」
こうして笑顔で2人で裁縫所に向かったが、その圭太の笑顔が柱合会議にて消え去る事になるとはまだ誰も知らない。