第10章 裁判と約束
「決してそのような意図は……ですが杏寿郎君に求めてもらえたなら喜んで受け入れます」
いつも恥ずかしがるくせに、ふいに杏寿郎の考えの斜め上をいく答えを述べる。
危うく理性が飛びかけた杏寿郎はヘナヘナと地面へとしゃがみこんで、そんな更紗を見上げた。
「相変わらず末恐ろしいな!破壊力が強すぎて俺の精神が押し負けるところだった!」
杏寿郎は一度深呼吸を零して気持ちを切り替え勢いよく立ち上がった。
「さて、俺はそろそろ柱合会議に赴く。遅くなるかもしれんが、更紗はこの屋敷内で待っていてくれ。あちらには隠の方の待機場所や裁縫所があるので覗いてみるもいいし、初めに通していただいた部屋で寛いでいても構わないとのことだ」
「では隠の方々の所へお邪魔してみます。外套のお礼も言いたいですし。その後、お言葉に甘えてお部屋で待たせていただきます」
先の行動が決まったところで2人は仲良く寄り添いあいながらそれぞれの目的地へと向かっていく。
「前田には決して1人で近づかぬように」
去り際の更紗に対する前田対策は抜かりなかった。