第10章 裁判と約束
「外の世界を知らなかった君が、ここまで外の世界のために強くあろうとするとはな……いや、出会った当初から更紗の心根は変わってないか。強く優しく、たまに硝子のように繊細な心がたまらなく愛おしい!」
杏寿郎は更紗の脇に手を入れ、勢いよくその場で抱え上げた。
驚いた赫い瞳、それを引き立てる白い肌と銀色の髪。
そしてその髪に枝垂れかかる、頭上の藤の花。
紫の花はまるで簪のように更紗の側頭部で揺れる。
思わず口づけをしてしまいそうになるが、この距離だとそれも叶わないので、今の杏寿郎には都合がいい。
そんな思いを振り払い、目をバチリと開き決意を新たにする。
「更紗!俺は決めたぞ!溝口少年を継子に勧誘する!もちろん溝口妹も一緒にだ!だが胡蝶が屋敷へ連れ帰ったので、継子にする意思があるのかを確認してからとなるがな!」
まさか炭治郎を継子にと杏寿郎が考えていたなど思いもしなかった更紗の頬は紅潮し、嬉しいと言葉に出さずとも、ありありと伝わる雰囲気を醸し出した。
「それは素敵ですね!なぜ炭治郎さんを継子にと思われたかお聞きしてもいいですか?」